大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)2188号 判決

被告人 長部新一郎

〔抄 録〕

控訴趣意第一点について。

原判決挙示の証拠中、所論、証人山本徳太郎、同今井マツ及び同大崎カノの各供述による立証事項(要証事実)は、いずれも被告人が右各証人方居宅を訪問した事実の有無及びその際における被告人の言動にあるところ、この点に関する右各証人の供述はいずれも、それぞれ山本肇、小林トキ及び大崎厚子から聞知した事実を内容とするものであるから、いわゆる伝聞供述に該当し、当事者の同意ある場合のほかは、刑事訴訟法第三百二十四条第二項により同法第三百二十一条第一項第三号所定の要件を具備する場合に限り証拠能力があるものであることは所論のとおりである。しかしながら、記録によれば原判決は右証人今井マツの伝聞供述の原供述者小林トキの原審公判期日における証言をも証拠に引用しているから、右今井マツの供述中、伝聞部分はこれを排除してその余の部分を採用し、右伝聞部分については原供述者小林トキの証言を採用してこれを証拠とした趣旨であると解するのを相当とし(大阪高等裁判所昭和二十五年十二月一日判決高等裁判所刑事判決特報第一五号第九〇頁以下参照)従つて原判決が右証人今井マツの供述を証拠に援用したのは毫も違法ではないし、また、右証人山本徳太郎及び同大崎カノの伝聞供述については、被告人及び弁護人出頭のもとに行われた右各証人尋問に際し、弁護人において右伝聞事項につき補充尋問を行いながら、被告人及び弁護人は、右伝聞供述の証拠能力につき何等異議を述べなかつたのみならず、その後の公判手続においても原供述者山本肇、または大崎厚子の尋問を請求しないでそのまま弁論を終結するに至つたことが記録上明らかであるから、被告人及び弁護人において右各伝聞供述を証拠とすることにつき黙示の同意をなしたものと認めるのを相当とし(最高裁判所昭和二十八年五月十二日第三小法廷判決、最高裁判所刑事判例集第七巻第五号一〇二三頁以下、同裁判所昭和二十九年五月十一日第三小法廷判決、同判例集第八巻第五号六六四頁以下各参照)しかも記録により右各伝聞供述のなされたときの情況に徴しこれを証拠とするのを相当と認めるので、叙上、刑事訴訟法第三百二十四条第二項、第三百二十一条第一項第三号の規定にかかわらずこれを証拠とするに妨げはないから、原判決が右証人山本徳太郎、同大崎カノの供述を証拠に援用したのは正当であると言わねばならない。所論はいずれも採用し難い。

(三宅 河原 遠藤)

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